アリサへの覗きがバレた。
 きっかけは何てこと無い。いつもどおりアリサの部屋へ侵入してアリサを眺めてたらいきなりアリサが起きだ
してついにバレた。ただそれだけのことである。
 まぁ当然というべきか、すぐに通報された。ツバキさんが飛んできて鉄拳制裁を喰らった。みんなの前で。公
開処刑。そして痛すぎる。この人素手でアラガミ倒せるんじゃないか…。
「悪いとは思っている! アリサだって年頃の女の子だしな! いろいろとショックだとは思う! でも俺は反
省しない!」
 こんな事態が起こってしまったのは私の責任だ。だが私は謝らない。
 って言ったらツバキさんとアリサにボコボコにされた。前が見えねぇ。

 今回のことに加えて、任務外でもともと問題行動の多かった俺なので、本来ならば懲戒免職らしいのだが(さ
すがにどう考えても重すぎなんだが、部隊の風紀と士気を極端に乱す行動は免職対象らしい)、アナグラに於い
てメインで遊撃活動を行う第一部隊に所属し、更に隊長である事、加えて最近の功績を考慮して停職で済んだよ
うだ。
 さすがにまたニートに戻るのは勘弁だったので、まぁありがたい処分である。どうせなら戒告処分で終わらせ
てほしかったです。
 ありがたいとはいうものの、行動が大きく制限されたのに加えて、俺一人では新人区間に入れないようになっ
た。
 まぁ部屋のロック解除の方法は言ってないし、たまたま開いてたって言ったから、処分が終わって新人区間に
入れるようになったらまた行き放題なんだけどな! 俺の言葉信じたあいつらざまぁw

「はぁー。…とはいうものの。さすがにずっと何も出来ないのは暇である」
 コウタが暇つぶしにとバガラリーを貸してくれたのだが正直見る気が全く無いので放置である。こんなもの見
るくらいならアリサの写真集(自作)でも見てるほうがよっぽど為になる。
「それにしても理不尽だ。もし俺が女だったならここまでならないだろうに。どうして男であるというだけでこ
こまでの処分が下されるのか理解に苦しむ」
 自分の名誉の為に言っておくと現在のアリサを襲うつもりなんて毛頭無い。守備範囲には入っているがまだア
リサはストライクゾーンではないのだ。3年早いわ。
「まぁ胸のサイズはすでにどストライクゾーンなんですけど!」
 といいながら飲み物を買いにいくために部屋の扉を開けたら目の前に新人のレンがいた。直前のは多分思いっ
きり聞かれてた。
「あ、ど、どうもどうも……!」
「え? あっ」
 気まずい雰囲気になりながらも適当にごまかして逃げる。
 で、ジュースを買ってから気づいたのだが俺の部屋の前にいるという事は俺に何か用があったということ、の
はず。ていうかそれ以外で俺の部屋の前にいたらそれは恐い。ストーカーですか。
 なんだろうかと戻ってみるとちょうどレンがこっちに向かってきていた。
「あ、レン。さっきは悪かったな。何か用だった?」
「いえ、特に用事はありませんでしたけど。恐らく暇でしょうから話し相手にでもなろうかなと思ったところで
すよ」
 嫌味かよと思いつつもあーそうかいと短く返す。
 レンはにこっと笑いかけながらジュースを買う。もちろん例の極悪殺人ドリンコである。
「よくもまぁそれ飲めるよな。……まぁ飲めないという程じゃないけど進んでそれを選んで飲むとか考えられん
のだけど」
「ふふふ、大人の味ですよ」
「お前俺より年下だろ」
 適当な雑談をしながら廊下を歩き、部屋へと戻る。当然のようにレンは着いてきている。
「それにしても、ご愁傷様ですね」
「全くだ。人の趣味を奪うとは博士もツバキさんもいい度胸してるわ。歯向かえないけど」
 部屋にいると本当にやることが無いのだ。アリサの写真集を眺めているのもいいけど、やはり本物がいるとい
うのに写真だけで我慢しろというのはいろいろと限界がある訳で。
「ふふふ、欲求不満の隊長の近くにずっといると襲われそうで恐いですね」
 お前は一体何を言っているんだ。
「男を襲う趣味はないやい」
「え、僕女ですよ。言ってませんでした?」
「ハハハ、一体何を……」
「……」
 え、何この沈黙。怖いんですけど。
「……マジで!?」
「まぁ嘘なんですけどね」
「おま……」
 ですよねー。たしかに中性的な見た目だし、男だって聞いた訳じゃないから勝手に俺が考えてただけなんだけ
ど、どうにもいっぱい食わされた感じなのでこれはいつか仕返しせざるを得ない。
「ふふふ、隊長さんは表情がころころ変わるので見ていて面白いです」
「俺はいじられキャラじゃないんだが」
 全くもって面白くない。
 基本的にいじる側にいる人間なのでこうやっていじられるのはどうにも苦手である。若干コミュ障はいってる
からしょうがないんだけどさ。
「そういやレンは動かなくていいのか? さっきコウタらが師匠が大量発生したとかで空母に向かってたけど」
「大丈夫ですよ。僕は今日からしばらくは休みを貰ってるので問題ないです」
「さよか」
 こいつはちゃんとした手続きで休みを貰い、俺は趣味の代償として強制的に休まされ、しかもこの後は確実な
減棒処分……。どうして差がついたのか。慢心、環境の違い。
「はぁー。謹慎解けたら久々に自宅に戻ろうかな。向こうに残してる荷物をこっちに持ってくるかなー」
「そういえば、隊長さんはここに来る前は何をしてたんですか?」
 とても答えにくい質問だな。
「遠慮なく聞いてくるその姿勢は評価してやろう。しかし人には言えない過去というものがあるのだ。嘘だけ
ど」
 おいこらジト目で俺を見るな。興奮する。
「まぁ基本的に無職だったよ。金が無くてもそれなりになんとか出来る社会だったしね。金が必要になれば日雇
いとか週払いのバイトで稼いで、て感じかな。普段は自分のやりたいことして過ごしてたかな」
「そんなので生きてこれたんですね」
「この社会を否定してるのか俺を否定してるのかどっちなんだ」
「どっちでもないですよ。ふふふ」
 俺やっぱこいつ苦手かもしれんなぁ。やりにくい。
 アリサはいろいろやってもそれなりに反応してくれるし、カノンちゃんはいじればいじるほど響く格好の餌食
だし(ただしその後一週間以内に同行すると高確率で誤射されまくる。あれは絶対狙ってるとしか言いようが無
い)、サクヤさんはああ見えて実は初心だからそっち方面でいじれば今は楽しめる。リンドウさん帰ってきたら
殺されそうだけど。
 とまぁそんな感じでアナグラの中には俺が楽しむための素材が大量にあるわけだ。ヒバリちゃんいじるとタツ
ミさんにどつかれるし、ジーナは胸の事でいじるとマジヘコみするし、アネットはまだイマイチよく分からんか
らいじれない。と、それなりに制限もある中で楽しむのは至難の業だが、俺にとってはそんなものあってないよ
うなものなのだ。アリサチャーンオッパイモマセテー
 とは言えども今はどっちみち何も出来ないというわけでやはり暇つぶしできるものを自宅から持ってきたい訳
だ。許可されるかどうかは分からんけど。
「まぁいいか。とりあえず今日は寝る。やりたいことは明日考えればいいや」
 時間を見ればまだ昼過ぎ。昼寝をするには丁度いい時間だ。どうせ今の時間のFBSは面白くないのでそれなら
寝て夢でも見たほうがいい。アリサが夢に出てくる事を祈るのだ。
「という訳で俺は寝る。あとは勝手にしてくれ」
「…分かりました。それではおやすみなさい」
 あーとやる気の無い返事を、寝る体勢に入りながらレンへと返す。
 完全に寝る状態に入った俺をしばらく眺めていたようだが、やがて一礼して部屋から出て行ったのを薄目で見
ながらも夢の世界へと旅立つ。おやすみ。




 

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